ユイシィが小さかった頃、ランバルスさんは酔っぱらっては
ユイシィのことをヴィーカと間違えてすまないと謝っていた。
今でも
寝言でヴィーカの名前を呟いていることがある。
だからランバルスさんもヴィーカに会いたいに違いはないはず。
けれどランバルスさん本人は、ヴィーカが今幸せに暮らしているならコーセルテルへは来ない方がいいと言います。
それもまた、娘のことを思ってのことではありますが、ユイシィも今回ばかりは納得できません。
「師匠がよくても、ヴィアンカさんがよくても、私が嫌です!!」こうはっきりとユイシィが言うのも珍しいですね。
ずっとランバルスさんのそばにいたユイシィは、彼が本当はどれだけヴィーカに会いたいのか知っているから。そして辛いことも悲しいこともランバルスさんが上手く隠してしまうことも知っているから。
ランバルスさんの悲しい顔は見たくない。いつも冷静でしっかり者のユイシィを突き動かすのは、ただ純粋なその想いです。
ユイシィの話を聞くも、カディオさんはやはりヴィーカをコーセルテルに連れて来るのは難しいと言います。
色々と決まりがあるのはもちろんですが、ランバルスさんは娘は亡くなったと言っていたので、地竜の里にもそう伝えていたのなら、竜たちに対してウソをついていたことになり、
ランバルスさんの立場も危うくなる。
ミリュウさんもヴィーカがランバルスさんの娘だと気づいていながら彼女に父親の存在を教えていないのは、ランバルスさんに拒否された時にすんなりと帰ってもらえるようにという配慮からだと推測するも、マシェルが
黙って会せれば面白いと思っているだけだと言います。意外と容赦ないマシェル(苦笑)
けれどなんだかんだ言いつつも、結局カディオさんも、ランバルスさんとヴィーカが一時だけでなくこの先も行き来できるようにどうしたらいいかちゃんと考えようと言ってくれました。
一番の大問題はヴィーカが自分を置いてけぼりにした父親を許せるかどうかだと心配するカディオさんですが、経験者のアグリナが平気だったと軽く言います。皆が皆、アグリナみたいなタイプではないと思いますが、少なくともヴィーカは似たタイプですよね(苦笑)
そしてエトワスが大地の精霊マドリムが味方になってくれるだろうと言うとカディオさんも驚きます。クレイベルさんの姉弟精霊なんですね。
そしてユイシィも、落ち着いたら案が浮かんだ。それならランバルスさんの承諾がなくてもヴィーカにコーセルテルに来てもらえるかもしれない――。
ユイシィの考えた案を実行するために、各竜術士の家へと向かうことになったマシェル。
まず地竜家へ向かう途中で、まだ帰らずに森の中で悩んでいたランバルスさんと遭遇します。
そしてマシェルはユイシィがアグリナと書庫回廊へ行っていて、今日は帰らないことを伝えました。
特別な頼みごとを外の人にできるかどうか、前例や何か方法がないか調べるために。
ミリュウさんが連れて来るのは
古代竜の専門家で、遺跡調査にも長けた人物。外にも危険な竜の遺跡がたくさんあるから、そういうものを調べてもらえれば助かる。
人間だけれど
月の精霊の友人で、大地の精霊マドリムの信頼が厚いうってつけの人。
だからエトワスとクレリアの見送りがてら、どんな人物なのか竜術士全員で見てみようということになった。
それで誰かが“秘密の約束”をしてくれるなら正式に竜の里へ知らせて了承してもらう。
マシェルの話にランバルスさんは驚きます。
ユイシィがただカディオさんに泣きついただけなら止められていたはず。
それを専門家として迎えるという、竜たちにも納得してもらえやすそうな案に、それを考えたユイシィに、ランバルスさんはさすがだと少し嬉しそうに溜息をつきました。
エトワスとクレリアを見送り、ミリュウさんが帰り、『イルベックの精霊術士』のコーセルテルサイドのお話がこれで終わりました。
けれどエトワスたちもヴィーカたちも、今後コーセルテルにどう絡んで来るのか、再登場が楽しみですね!!