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「コーセルテルの竜術士」シリーズの感想と、たまに二次創作小説を書いています。 他の漫画やアニメの話もしますので、色々ネタバレ注意です!
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▼「七夕の夜に(1年目)」
ま~た時間ギリギリになっちゃいましたけど(汗
風花ちゃんの誕生日!!
……の話ではなく、くくるの誕生日の話でした。ややこしい;;
キャプションにも書きましたけど、これから書く(これから書く!!)櫂くくの前説のつもりだったのに、櫂くんの存在感が皆無です。ごめんね。

本当はきみそめの続きを書きたかったんですけどね。進まない……。

で。

やっぱりある(苦笑)、「七夕の夜に(1年目)」の没版。
こっちはちょっとは櫂くんの名前も出てるんですけど、誕生日の話にしてはちょっと重いなと思ってやっぱりやめました。
めっちゃ中途半端に終わってますけど;



 今日は7月7日、くくるの誕生日だった。
 月美の発案でくくるの部屋でプチ誕生日パーティーが行われ、都合がついた風花と夏凛、それに櫂の5人だけが集まった。
 シェフの月美による料理の他、夏凛は飲み物、櫂はお菓子、風花はスイーツとそれぞれ担当を決めて持ち込み、がまがま水族館の同窓会ともいえる楽しいひと時はあっという間に過ぎ、片付けも終えてみんなを見送った後、
「あ~、楽しかった~!」
 部屋の中へと戻り、くくるは気持ち良さそうに伸びをする。
 最近は企画進行中のコスプレイベントのために残業が多く、くくるは家と会社を往復するだけの毎日だった。
 今日も少し残業はして来たのだが、風花と夏凛に強制連行された。
 明日からも激務ではあるが、そうでもされなければこうして羽を伸ばすことも出来なかったであろうから、2人には感謝するしかない。
「みんなにお祝いしてもらうなんて、小学生の時以来だよ」
 くくるは後ろを振り返った。
 月美たちは帰ったが、部屋が隣の風花だけは一緒に戻って来ていた。
 締まりのない顔で笑うくくるに、良い気分転換になったようだと風花も微笑み返す。
「そうなんだ」
「そうそう! おじいとおばあには毎年お祝いしてもらってたけどさ、誕生日会なんて子供の時にしかしないでしょ?」
「えっ」
「え?」
 くくるの言葉に驚いた風花に、くくるはぱちくりとまばたきをする。
「風花は久しぶりじゃない感じ?」
「アイドルだった時は、メンバーのみんなにお祝いしてもらってたから」
 首を傾げたくくるの問い掛けに、風花は少しだけ眉尻を下げて苦笑した。
 くくるにはアイドルの私生活というものがどんなものか想像もつかないが、それはきっとお決まりのイベントのようなものなのだろうと納得する。
 風花も他のメンバーの誕生日にはお祝いしていたのかと思うと、人数の多いグループだから大変だっただろう。
「ところで」
 それ以上話を掘り下げて欲しくなかったのか、風花が話題を変える。
「もしかして、沖縄には誕生日プレゼントの習慣ってなかったりするの……?」
 やや困惑気味に訊ねて来た風花に、くくるはまたぱちくりとまばたきをする。
「え? 別にそんなことないけど?」
 どうしてそんなことを訊かれるのかと不思議そうなくくるに、風花はますます困惑する。
「だって、誰もくくるにプレゼント、渡さなかったから……」
 風花は言いながら部屋の隅に置いてある自分の荷物へと視線を向けた。
 いつも持ち歩いているバッグの他にくくるへの誕生日プレゼントを持って来ていたのだが、月美も夏凛も櫂も、誰もくくるへのプレゼントを渡す気配がなく、風花も渡すタイミングを掴めずにそのままになってしまったのだ。
 困ったような風花を見つめ、くくるは苦笑いを浮かべた。
「あ~、それね。お互い様ってことで、プレゼント渡さないことにしてたんだ」
「え……」
 今度は風花がぱちくりとまばたきをした。
 くくるはリビングに腰を下ろし、風花を手招きする。
 風花もテーブルを挟んでくくるの正面に腰を下ろした。
「本当にすっごく小っちゃい頃はさ、拾った貝殻で作ったペンダントとか、折り紙で作った花束とか、そういうプレゼントをあげたりもらったりしてたんだけど」
 話し始めたくくるに、風花は耳を傾ける。
「小学校高学年ともなって来ると、さすがにそういうのじゃ子供っぽすぎるでしょ? でもプレゼントを買おうと思ったら、当然、お金がかかる。私はおじいとおばあに負担かけちゃいけないって思ってたし、うどんちゃんもお母さんが1人で頑張ってるの知ってたから、お互いにプレゼント渡すのやめようって決めたんだよね。そうしたら、櫂も夏凛ちゃんも気を遣ってそれにつき合ってくれてさ。だから私たちの間ではプレゼントを渡さないけど、他の人は普通に渡してると思うよ」
「そっか……」
 何でもないことのように笑うくくるに、風花は肩を落とす。
 自分にとっては誕生日の相手にプレゼントを渡すのは当たり前のことだったが、それは誰にとっても当たり前ではなかったと、自分が恵まれている環境で育ったのだと思い知り、返す言葉もなかった。
 風花は自分が持って来たプレゼントをちらりと見やる。
 せっかく用意したのだから渡したいが、くくるにとっては迷惑かもしれない。
 迷惑であるならば、プレゼントを渡す意味がない。
「……もしかして、風花、プレゼント用意してくれてた?」
 風花が自分の荷物の方を見つめていることに気づき、くくるが訊ねた。
 プレゼントを渡さないのはくくるたちの内輪ルールなのだから、今まで別の場所で暮らしていた風花がそれを知らないのは当然だし、むしろ誕生日パーティーに招待されたのにプレゼントを持参しない方が常識からは外れている。
 くくるの問い掛けに、風花は躊躇いながらも小さく頷いた。
「ホントに!? だったら嬉しいな!」
 風花の心配をよそに、くくるは満面の笑みを向ける。
 そんなくくるの笑顔を見てきょとりと瞳を丸くしてから、喜んでくれるならと風花はプレゼントを取りに立った。
「誕生日おめでとう、くくる」
「ありがと~!」
 青いリボンの巻かれたアクアブルーの袋を受け取り、くくるはにっこりと微笑む。
「開けていい?」
「どうぞ」
 プレゼントを渡した際の常套句を言われ、風花は苦笑した。
 包装を開けるくくるの瞳がまるで初めてプレゼントを貰った子供のように輝いているのが見て取れて、風花も嬉しくなって自然と表情が綻ぶ。
「えっと……ペンギン?」
 取り出したものにペンギンの顔のような絵が描かれていたが、それが何か分からずくくるは首を傾げた。
「アイピローだよ。くくる、最近パソコンに向かってばかりみたいだから」
「風花ぁ~……!!」
 品物となぜそれを選んだかの説明をされ、くくるは自分を労わってくれる風花の気持ちに思わず涙を浮かべる。
「ありがとう! 早速、今夜から使わせて貰うね!」
 嬉しそうに微笑んだくくるに、風花もにこりと微笑み返した。
「そういえば、風花の誕生日は?」
 私は貰ったんだから返さなきゃと、くくるはやはり何でもないことのように訊ねた。
 しかし先ほどの月美たちとはプレゼントを渡したり貰ったりをしていないという話を聞いてしまった手前、風花は答えていいものか悩んでしまう。
 渋い顔をしている風花を見つめ、くくるはあははと笑い飛ばした。
「変な気を遣わないでよ。もう子供じゃないんだから、プレゼントは自分の稼いだお金で――」
 そこまで言って、くくるはハッとした。
「そっか……もう自分のお金があるんだから、これからはうどんちゃんたちにもプレゼント渡せるじゃん! ありがとう、風花!」
 くくるはずいっと風花に詰め寄る。
「プレゼント渡さないのが当たり前になってたからすっかり忘れてたけど、もうお金のこと気にしなくていいんだよ! だから風花にも、みんなにもプレゼントあげられるんだよ! 気付かせてくれてありがとう、風花!!」
「ど、どういたしまして……?」
 にっこりと満面の笑みを間近で向けられ、風花は思わず反射的に答えた。
 風花にとっては誕生日にプレゼントを渡すのは当たり前のことで、相手に喜んで欲しいという気持ちはもちろんあるけれど、そこまで特別なことでは無くなってしまっていた。
 しかしすでに誰に何をあげればいいだろうと楽しそうに考え始めているくくるを見つめ、それがものすごく特別なことであると思い出す。
 その人の誕生日は1年に1度しかないのだ。
 そして誕生日とは、その人が生まれたことを祝う日なのだ。
 誕生日があるということは、そこにその人が存在しているという何よりの証なのである。

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