主人公は16歳の少女・
クレリア。
イル・レネイス精霊術士国で精霊術士の学校を卒業したばかりの
新米精霊術士。
けれど彼女はカディオさんと同じように、精霊を弱らせることも籠に閉じ込めて連れ歩くのも可哀想と思っている優しい子です。
新米の術士は普通、上位の術士に弟子入りして修行するところから始めるそうですが、彼女はなぜかどこにも弟子入りさせてもらえない。それでも仕事を探して精霊術士への依頼を取り次いでくれる店を訪ねるも、精霊を持っていない新米に任せられる仕事は無いと追い出されてしまいます。
肩を落とすクレリア。そんな彼女に1人の女性が声をかけます。
いきなりきました、
エカテリーナさんです!
エカテリーナさんはクレリアに名前、年齢、そして家族や故郷を訪ね、どちらもないと彼女が答えると、精霊術士としてちょうどいい仕事があると言ってクレリアを郊外へ連れ出します。
そしてひと気のない場所まで来ると――
「みつけたよ。おまえ達の探すちょうどいい娘だよ」と言って、いきなりクレリアを風竜術で飛ばしました!
相変わらずいきなりですね(苦笑)
「本物の精霊術士におなり、クレリア」
エカテリーナさんはそう言ってクレリアを見送りますが…
本物の精霊術士とはどういう意味?
それに、精霊にとって精霊術士は敵のはずなのに、なぜエカテリーナさんが精霊術士を探していたのか…その謎はこの後すぐ!!(笑)
吹き飛ばされ、どこかの森の大きな木の下についたクレリア。
自分の置かれた状況を深く考える間もなく、目の前に倒れている少年を見つけます。しかも彼は熱があるようです。
水の術が使えたら、と悔やむクレリアですが、術が使えなくても出来る事はあると、
少年を担ぎ上げました(笑) おとなしそうなふんわり系の外見なのに意外とワイルドです(苦笑)
森があるのだから川や池がそばにあるはずと水場を探しに走り出し、村を見つけます。
井戸があることと人がいることを期待するクレリアですが、担いでいた少年が誰もいないし井戸もないとしゃべりました。
しかしそこで諦めない、ポジティブ思考のクレリア。寂れたとはいえ村があったのに井戸がないということは、水場がすぐ近くにあるのだと探し、川を見つけ、少年を下ろし、さらにその上の木の枝にロープで巻いた石を引っ掛けて木陰を作るという気の遣いよう。そもそも一人旅で色々必要だとはいえ、女の子がロープを持ち歩いているものでしょうか(苦笑)
クレリアは川で水を汲み、少年に熱冷ましの薬を飲ませます。
容態が落ち着き、クレリアが飛ばされて来たことを聞くと少年は――
「おだやかでのん気なおひとよし、丈夫そうだがあまり頭はよさげじゃなくて人をうたがわない。でも見た目はそれなりにいい感じの、俺と歳の近いやさしい娘をつれてくる――と、あいつらが言ってたな…」
彼の言葉に喜ぶクレリア。やっぱりのん気だ(笑)
ついでに身寄りも帰る所もないなら都合が良いとも、と続けた少年に、クレリアは帰る所がないわけじゃないと言いました。
クレリアは旅芸人の一座で育った。上位の術士たちはそれが嫌でクレリアを弟子にしてくれないそうです。差別してるってことですかね…。
血の繋がりはないし、みんな旅をしているので故郷でもないけれど、クレリアは一座が大好きでいつかは帰りたいと思っている。だけど
一人前の精霊術士になるまでは帰ってくるなと言われている。
そう話したクレリアの言葉に反応する少年。クレリアが新米でまだ精霊を持っていない精霊術士だと知り、不適な笑みを浮かべます。
少年の名は
エトワス。彼はクレリアを連れて森の外へ向かいます。
そんな2人の後を「メヘー」と変な声で鳴く子ヤギがついてきます。クレリアが森へついた時からずっと様子を伺っていた子ヤギ。クレリアは子ヤギと言っていますが、明らかに普通のヤギじゃない。
そんな子ヤギもどきにエトワスはついてくるなと一喝。子ヤギもどきはその場に留まります。
森を出ると何もないひらけた岩場になっていて、エトワスは倒れます。
彼を心配し、森の方が休めると言うクレリアですが、エトワスは精霊だらけの森では話ができない、と。
精霊にとって精霊術士は敵でしかない。ヘタをしたら殺される可能性だってある。
さっきの子ヤギも木の精霊が化けたもの。
けれど精霊といえば人型しか知らないクレリアは驚いています。
そして精霊について詳しいエトワスに精霊術士なのかと訊ねると――
「俺は精霊だよ。人間になる事で封印された、たちの悪い精霊――なんだってよ」
昔、とてつもない力を持った精霊がいたが、そいつはこの世界が嫌いで嫌いで壊してしまおうとした。それを手を尽くして封印したのがエトワス。
エトワスにその精霊だった時の記憶はないらしいのですが、けれど彼は精霊に戻りたいと願っています。
だから精霊術士であるクレリアに、精霊に戻して連れて行けと言うのです。
どうすれば戻るのかとクレリアが訊けば、
「俺が死ねばいい」と答えるエトワス。もちろんクレリアはできませんと即答です。
けれど今しかないと言うエトワス。あの子ヤギは森の主で、その主が自分と離れている今しかない、と。
1人で人間をやっているのはもううんざりだと言うエトワス。
さっきの村は、自分のせいで誰もいなくなったと言います。村の向こうには畑が広がっていたし、今いる岩場も昔は青々とした牧草地だった。
「森の主が…精霊たちが、流行病で死にかけた俺を永らえさせようとして、その力を使い果たしたせいだ」
本来なら木や水や大地を守るはずの力。それを精霊たちは、エトワスを人間でいさせるために何でもする。
クレリアが連れてこられたのもエトワスに人間の仲間を与えるためだったようです。
でもエトワスはクレリアが精霊術士だということを知らずに連れて来たのだと思っているようですが、クレリアは精霊術士の仕事があるからと声を掛けられた。
エトワスの力を精霊術士に悪用されないためにこの地に閉じ込められているのに、精霊術士をわざわざ連れて来るはずがない――。
けれど離れた所からこちらを心配そうに見ている子ヤギの精霊を見て、クレリアは精霊たちがエトワスを守るのは封印のためだけじゃないと思いますと言いました。
エトワスが大切だからこそ、いい人をと選んで連れて来たはず。
「あなたに幸せに生きてほしいんです」
そう満面の笑みで言ったクレリアに、エトワスは少し照れた様子を見せるも、だから何だって言うんだと強い口調で返します。流行病からずっとエトワスは病弱で、倒れるたびに精霊たちは彼を癒す。
このままではあの森もそのうちなくなって、精霊たちもいなくなる。
そしてエトワスは、クレリアなら精霊に戻った自分を悪用しないだろ?と言って、その先の
崖から飛び降りた――!!
森の主が慌てて助けに行こうとしますが、それをいつの間に来たのかエカテリーナさんが止めます。
「大丈夫、ちゃんと選んで連れてきたんだよ。あの子は本物の精霊術士になる娘だよ」
そう告げる彼女の視線の先では、エトワスの後を追って飛び降りるクレリアが!!
下は川になっていて、泳ぎは得意だと言うクレリアですが、とても助かるような高さではありません。
いつもは助けてくれる森の主・クルルと離れてしまったことを後悔するエトワス。
クレリアを助けてくれと強く願った彼の思いに応えてか、昼間なのに夜の闇の中に大きな月が現れました。
そして不思議な空間でクレリアが見たのは、お母さんも、村のみんなもいなくなってしまい、一人ぼっちになってしまって寂しいと泣く子供のエトワス。精霊たちは共にいるけれどエトワスが倒れるたびに無理をする。だからエトワスが精霊に戻れば無理をさせなくてすむし仲間にもなれる。けれどそれはできないと言うクルル。
「人間として幸せに人生を全うすれば、私がこの星を好きになる。そうすればこの巨大な力は壊す者ではなく守る者となるだろう。そう言って彼らは私を人間(ひと)に変えた」
そう言ってクレリアの前に姿を現したのは、
旅の月の精霊・イルベック。エトワスの中に封印された精霊。
イルベックが現れたのでエトワスが死んでしまったのかと青くなるクレリアですが、クレリアを助けるためにエトワスがイルベックを呼び起こしただけ。
けれどエトワスの体ではイルベックの力を操るには弱すぎる。
「だからおまえが月の力を使いなさい、精霊術士クレリア。そして私を、エトワスを幸せにしておくれ」
そう言ってイルベックは姿を消しましたが、クレリアは月の力を使って浮き、無事にエトワスと共に崖の上に戻りました。2人とも気は失っているようですが。
エカテリーナさんになぜ精霊術士を連れて来たのかと怒るクルルですが、エカテリーナさんはエトワスを支えて助けて守ってくれる、穏やかでお人好しで賢くなくても強くて優しい可愛い女の子を連れて来てって言ってたでしょ?と笑ってます。
つまりクルルはエトワスの嫁を連れて来て欲しかったんですね(笑)
でもこれで旅に出れる、とエカテリーナさん。
「月の精霊を真に守れるあの場所へ」
それはつまり、コーセルテル――!?
クルルはエカテリーナさんにお前が飛んで連れて行ってくれればすむのでは?と言いますが、色々と事情があると笑って返されます。
だけどコーセルテルも精霊がたくさん住む場所。そこへ精霊術士が行っても大丈夫なのか――!?(すでに例外が存在していますが)
けれどエカテリーナさんが言うには、精霊術士も元々は竜術士と同じで
精霊の守り手だった。それが本当の精霊術士。
どこかの時代で誰かが精霊術を悪用して、今の精霊術の形態に変わってしまったということでしょうか。
そしてクレリアとエトワス、2人の旅が幕を開ける――!!
…この2人がコーセルテルへ着いたら本編に戻る、ということでしょうか。
コーセルテルとイルベック、2人の月の精霊の再会は果たされるのか――!?