街の術士館にいるレナーテの元へ戻るぺネットとサミー。
入り口の所で他の術士たちに向かって精霊が盗まれたと騒ぎますが、レナーテに部屋へ通され事情を話すと、レナーテはぺネットに火の精霊を使わせて、エトワスがやったのと同じように精霊を籠から引っ張り出しました。
レナーテもそんなことをできるとは知らなかったようですが、おそらく月の精霊のなせる技でしょう、と。
クレリアが月の力を手に入れたのかと驚く弟子に対し、
手に入れたのは月の力だけでなく月の精霊そのものでしょうと、レナーテはまるでそうなることを知っていたかのように冷静です。
しかし、先ほどぺネットとサミーが外で話していた術士たちが部屋の扉の前で話を立ち聞きをし、月の精霊を捕まえたらしいということに大騒ぎします。
月の精霊を捕らえることは精霊術士国(イル・レネイス)はじまって以来の宿願だそうです。そりゃあ強大な力を持った精霊ですから、精霊術士にとっては魅力的でしょうね。
しかし騒ぐ術士たちに鎮まりなさいと一喝するレナーテ。はっきししたことが分かれば正式な場で話すから騒ぐなと言って彼らを部屋から閉め出します。
しかし術士たちはクレリアを捕らえるために動き出す――!!
一方のレナーテはそんな術士たちをあさましいと言って溜息をついています。
力を持つ者は更なる力を求める。上流術士たちは常に他者より強い精霊を手に入れようと模索し、横取りすることも辞さない。本当にあさましい、と。
レナーテはイルベックが欲しくてぺネットとサミーに追わせたのではなく、ただ懐かしかっただけ。彼女は小さい頃にイルベックから力をわけてもらったから。
レナーテはイルベックに会ったことがあるので、今でもイルベックは金色の長い髪を持った本来の姿で認識していますが、会った事のなかったぺネットとサミーにはエトワスとしての姿にしか見えていません。
クレリアの隣を歩いていたのは同い年くらいの男の子だったという話に、レナーテは少し考え込みます。
と、そこへ部屋を訪ねて来た人物が。
やって来たのはイルベス・ロウズ。カディオさんがお世話になっていた術学舎の校長先生です。
彼がレナーテを仕事でここへ呼んだそうなのですが、それよりも術士たちがイルベックのことをコソコソ話していたからそれを問いたい、と。
ロウズは月の精霊を捕らえられる術士となると…と、「イルベス・カ…」まで言いかけ、レナーテが違いますと即答。行方不明の彼ではないって……その行方不明の彼とはカディオさんのことでしょうか? 確かにカディオさんは月の術資質を持っていましたし。
ロウズは生徒のことはだいたい覚えているそうで、ぺネットとサミーはもちろんですが、クレリアのこともよく知っているそうです。特にクレリアは特別づくしの生徒だった、と(笑) 苦学生だったこともありますが、学校がそういう生徒のために用意している仕事でも、荷運びや屋根の修繕など、普通は女の子がやらないような仕事もやっていたそうです(苦笑) 彼女の運動能力がずば抜けていたのは昔からなんですね。
そしてロウズは
クレリアは精霊術士に向いてないと思っていた。クレリアは仕事のひとつで学校で扱う精霊の世話をしていたけれど、情が移ってしまって精霊を気遣うようになってしまった。精霊を使うのにためらいがあるようでは術士にはなれない、と。
気の優しい者は小賢しい術士の中ではやっていけないと、ロウズが思い出している後姿はカディオさんですね。
だからクレリアが月の精霊を捕まえたなんて、ムリだと、できたら奇跡だと言うロウズ。ひどいよ校長先生(笑)
だけど逆なら分かる、と。精霊に好かれる娘だったから気に入って連れて行かれたとか、と例に挙げたロウズに、レナーテはそれですと返しました。
レナーテがロウズに月の精霊に会った時のことを覚えていますかと訊いているのですが、つまりロウズも月の精霊に会ったことがある!? レアな精霊のはずなのに何このエンカウント率(笑)
レナーテはイルベックに会った時のことをよく覚えていると言って、当時のイルベックが言っていた言葉を思い返します。
どうやらイルベックはずっとエトワスの姿をしていたわけではなく、人として何度か生まれ変わっているらしいです。
そしてイルベックはレナーテに
“人間の幸せ”を味わってみたいと言ったそうです。
「あたたかい家族、健康に育ち、友を持ち、夢を持ち、伴侶を得て、自分もあたたかい家庭を築く――…まあそれが幸せのすべてとは違うんだろうけど。人間(ひと)の生命(いのち)をめぐり渡る、この旅が終わるまでに――…」そう言っていたことから、レナーテはクレリアが
友、もしくは伴侶として選ばれたのではないかと推測。
伴侶という言葉に騒ぐぺネットとサミー。さすが年頃の女の子(笑) それはいいとして、ロウズがまず保護者に一言あるべきだろうって…いつからクレリアの保護者になったんですか(笑)
レナーテはそれよりも、サミーの精霊を盗んだのは干渉を嫌った月の精霊自身かもしれないことを考えなければならない、と。そうであるなら彼らをそっとしておかなければならない。
どうやらレナーテやロウズは権力争いをしているような精霊術士とは違うようですね。
しかし話を盗み聞きしていた術士たちは、すでにクレリアとイルベックを捕らえるために奔走しています。
そして、ヴィーカと共に行くことにしたクレリアとエトワス。
街を出てもう5日経っているそうですが、ひとます今夜の宿へ――って、
ヴィーカさん!!??あっれー? ヴィーカって男だったよね? これって女装だよね? でも女装にしては胸がしっかりあるんですけど…今までの方が男装だったの?? どっちなんですかー!?
前回までのを見返しても男の人にしか見えませんが……。
術士の仲介も兼ねているこの宿では、すでにクレリアの手配書(!)が回っているらしく、ボーイさんがクレリアを怪しんで見てますが、ヴィーカが身分証を見せたら態度が急変。どんな身分証なのか分かりませんが、身分証が本物なら、やっぱり女性なのか…?
ヴィーカにエトワスの正体は馬車の中ですでに明かしてあるそうです。
そしてヴィーカは両親の悲願を継いで竜の都を見つけたいだけだそうです。
だからコーセルテルを見つけてもどうこうする気はないし、もちろん月の精霊であるエトワスを引き渡して英雄になろうとも思っていない、と。
けれどエトワスはまだヴィーカのことを信じていいのか迷っている。
エトワスは怒鳴ってばかりで、ヴィーカはそれを笑ってかわし、クレリアはエトワスをなだめようと必死です。
そんな3人のいる部屋の窓の外に、ヴィーカはクレリアを探しているらしい精霊術士の姿を見つけます。そして――
「月の精霊とその守護者を守ってなる英雄なら、なってもいいかなと、今思った」迫る追っ手から3人は無事に逃げ切れるのか――!?