コーセルテル 子竜物語 ８２話

「竜の都の竜術士⑤」　（ゼロサム３月号）

ついにランバルスさんがヴィーカと別れた真相が明らかに――！

地竜家へと急ぎながら、ランバルスさんは過去のことを思い出していました。
盗賊団の解散後、官憲や賞金稼ぎに親子３人は追われていた。
宿にも泊まれず医者にも診せられない逃亡生活の中でシーダさんが病気にかかり、彼女はその道中で命を落としてしまいました。
もちろんランバルスさんはシーダさんに実家に帰るよう言いましたが、帰ったら二度と竜都は目指せないとシーダさんは拒否。
それより何より、竜都に辿り着けなかったとしても、最期まで一緒にいたい。
泣きながらそう言った彼女を、無理に帰すことはできなかった。
そしてランバルスさんはヴィーカに、お母様にもらった王印金貨を見せればおじい様の所へ連れて行ってもらえるから行くんだと言い、自身は妻の亡骸を抱いて雨で増水した川の中へ――。

再会したヴィーカは許してくれたけれど、いつもいつも悔いてばかりいた。
だから、今度こそ守りたい。地竜の子供たちを――。
もし自分のいない間に黒精霊が襲ってきたら、と不安に思っていると、ふいにユイシィの「大丈夫です」という力強い言葉を思い出しました。
マシェルの家に来る前に、もし黒精霊が近くに来たら書庫の精霊に教えてもらって逃げる、とユイシィは意外と冷静でした。
そして、ずっと外から来る悪者を見張る役目を負って来た師匠なら、竜を害する悪者が現れたら地竜術士として何をすべきかわかっているはずだ、と。
さらに、ヴィーカがいた時に話したことも思い出します。
竜都にいて、しかも竜の守り手の竜術士になっていたランバルスさんに、ヴィーカはすごいなと言いました。
お父様はお母様の願い以上の事を叶えたんだ、と。
お母様がそれを喜んでいないはずない、お父様だってわかってるでしょ？――と。

２人の娘の言葉を思い出し、ランバルスさんの顔には思わず笑みが零れます。
そして自分が今すべきことは地竜術士としての仕事だと冷静になります。
しかし冷静になると、さっきミリュウさんがいたことまで気が付きます。
いつの間に帰っていたのか、ヴィーカとどういう仲なのか聞かねばと今度はまた別の意味で父親の顔です（苦笑）

そしてマシェル家。
コーナは、自分はやったことなないけれど、イルベックができるので自分も黒精霊を消せるはずだ、と。
消す、という言葉にマシェルは困り顔。
それに気づき、ナータがコーナに消さずに竜を襲わないようにすることはできないのかと訊ねます。
するとコーナ、これにもあっさりとできますと答えました。けれど、とても困難だ、と。
黒精霊を夢の中に閉じ込め、その夢の中で悲しみや恨みの元になったものを取り除けば、本当の過去は変えられなくても心が穏やかになるかもしれない。
けれどコーナは彼の幸せが何か知らない。その人の中に幸せな夢の元があればコーナが引き出すことができるけれど、彼にはそれがない。元となった人間の望みが何か調べなければならない。
それに、誰の夢に閉じ込めるかも問題。失敗すれば、その身をのっとられるかもしれない――。
そんな危険な役目に、僕が、とマシェルが言おうとしますが、その場にいた他の全員に一斉に「ダメ！！」と言われます。マシェルは分かり易いですからねぇ（苦笑）
コーナにもダメだと言われます。黒精霊からはわずかだけどイルベックの力を感じるので、カディオさんもダメ。
そしてコーナはナータが適任だと言いました。
けれど今度はマシェルがダメだと猛反対。
しかし、ナータはやってみると言います。
マシェルはナータが黒精霊を助けたいと思った自分のためにやってみると言ったと思って、そんなことは望んでいないと説得しようとしますが、ナータは「自分の意思――で、自分のためにやって…みたい――と思う」と。
滅多に自分自身の意思を示さないナータの決意に、マシェルはどうするのでしょうか…！？