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「コーセルテルの竜術士」シリーズの感想と、たまに二次創作小説を書いています。 他の漫画やアニメの話もしますので、色々ネタバレ注意です!
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ちょっとサイトの方を更新できる状態ではないのでこちらに載せます。

「イナズマイレブン アレスの天秤」22話のネタバレを含みます。

円秋です。

久しぶりの小説……文章がおかしかったらごめんなさい><





※秋ちゃんがなぜ円堂と同じ利根川東泉にいたのかの理由を考えてみた話です。
 時間軸としては、まだ雷門メンバーが強化委員として派遣される前。
 設定を勘違いしている部分があったらすみません…;;





(……どうしようかな)

 授業はとうに終わり、西日が強く差し込む放課後の教室。
 試験前で部活はなく、クラスメイトもすでに帰り、たった1人だけ取り残されたその場所で、木野秋は溜息をついた。
 自分の席に座り、机の上の紙とにらめっこを続けて早くも1時間が経とうとしている。
 彼女が頭を悩ませているのは進路希望調査票――ではなく、強化委員志望校調査票という1枚の紙である。
 フットボールフロンティアで優勝し、中学サッカー界日本一となった雷門中のサッカー部は、詳細は省くが様々なワケあって、全国の中学校へ赴き、強化委員という名目で各校のサッカー部発展のために尽力することになった。
 基本的には選手それぞれの希望に副ってくれるとのことで、自分が以前通っていた学校を選ぶ者、自分の特技を生かせるチームがある学校を選ぶ者、あえて問題児のいる学校を選ぶ者と、学校選びにもメンバーたちの個性が見られた。
 そして、強化委員として派遣されるのは、選手だけではなかった。
 マネージャー達にもその白羽の矢は立ったのだ。
 雷門サッカー部の誰かが強化委員として行く学校に一緒に行ってもいいし、彼らとは別の学校に単独で行ってもいい。
 そう指示されたものの、他の部員たちが次々に行く学校を決める中、秋はいまだ決断できずにいた。
 ――否。

(円堂くん、どこにするのかなぁ……?)

 キャプテンである円堂守が志望校を決めていない。
 秋が志望校を決められない最大の理由はそれだった。
 出来ることなら、彼と同じ学校に行きたい。
 しかし、音無春奈が兄の鬼道有人と同じ学校に行くというのとはワケが違う。
 秋は円堂のクラスメイトでありサッカー部設立当初からの仲間であるが、彼女ではない。
 それなのに円堂と同じ学校に行きたいとは、大きな声では言えなかった。
 しかし受け入れてくれる側の学校にも色々と準備がある。
 志望校の締め切りは、すでに今日だ。
 現在の時刻は午後4時30分を過ぎたところ。
 5時までに担当の先生にこの紙を提出しなければ、学校側に行き先を決められてしまう。
 運が良ければ円堂と同じ学校になるかもしれないが、確率的にはかなり低い。
 しかし選手としてチームに入るわけではないので、正直、どこの学校でも一緒だという気持ちはある。
 だからいっそのこと、先生達に任せてしまおうか。
 そんなことを思いながら、真っ白なままの調査票をぼんやりと見つめ、もう何度目になるか分からない溜息をついた時だった。
 今まで、時折遠くでカラスの鳴く声が聞こえる程度で、ほぼ静寂を保っていた世界に、バタバタという足音が響いた。
 誰かが忘れ物でも取りに来たのかな、などと思いながら、秋は何となしにドアの方へと顔を向ける。
 しかし、足音が近づいて来るものの、教室は他にもたくさんあるのでこのクラスに用があるとは思っていなかった。
 けれどもその慌てたような足音はどんどん近づいて来て、この教室の前で止ま――

「秋、いるか!?」

 ――るよりも早くドアが勢いよく開けられ、オレンジのバンダナが転がるように飛び込んで来た。
 秋は驚いて瞳を丸くするが、彼女が返事をするよりも先に、その姿を見止めた円堂はぱぁっと破顔する。

「良かった、まだいた! 今職員室行ったら秋はまだ紙出してないっていうからここにいるのかなって思って! どこにするかもう決めたか!?」

 矢継ぎ早に言いながら円堂は窓際の秋の席まで駆けて来る。
 驚きに声を発せられない秋には気づかないようで、円堂は彼女の机の前まで来ると、バンッと机上に勢いよく両手をついた。

「オレ、利根川東泉にしたんだ! 秋も一緒に行かないか!?」

 まるでサッカー部員を勧誘していた時のようなキラキラとした瞳で、円堂は秋を見つめた。
 期待に満ち溢れた幼子のような純粋な彼の瞳を、秋は呆然と見つめ返す。
 しかし、彼が強化委員として赴く学校を利根川東泉に決めたこと、それを書いた調査票をついさっき提出して来たこと、秋がまだ志望校を決めていないと知って同じ学校に行こうと誘いに来たことは一瞬で理解した。

「……と、ねがわ、とう、せん……?」

 強化委員として赴く学校は基本的に選手それぞれの希望に副ってくれる。
 しかし、それは1万を超える全国の中学校の中から、数十校に絞り込まれリストアップされた中から選ぶことだった。
 その中に、利根川東泉という学校はなかったはずだ。
 小首を傾げた秋に、円堂はニカッと満面の笑み。

「ああ! リストに載ってた学校はみんなサッカー部があってそれなりに頑張ってる学校だ! でもオレは、どうせならゼロからやりたいと思ってさ! だからサッカー部のない学校にしたんだ!」

 まるでこれから宝探しにでも行くような様子で嬉々として語る円堂に、秋は唖然とする。
 ただでさえ他校の一員になるのは大変だと思われるのに、わざわざ何もない所から始めようとするなんて。
 けれど、円堂らしいといえばらしいのかもしれない。
 彼が求めるのは強いサッカーではなく、いつだって楽しいサッカーなのだ。
 周囲のすべてを魅了し、幸せにする。
 彼のプレーは、まさに彼の人柄そのものだった。

「だからさ、秋にも一緒に行って欲しい。雷門サッカー部を作った時みたいに、また一緒にサッカー部作ろうぜ!!」

 円堂は秋に向かって白い歯を見せて笑う。
 断られることは微塵も想定していない様子だ。
 そこで秋はようやく、円堂が自分を同じ学校に行こうと誘っていることに気づいた。
 いや、そういう意図で話していることは分かっていたが、一度にたくさんの情報が溢れすぎて、それを本当の意味で受け止めることを無意識に避けていたと言うべきか。
 その証拠に、気づいた瞬間、全身の熱が沸騰するような感覚に陥った。
 顔も耳も胸も腕も、とにかく体中が熱い。
 喉の奥が張り付いて声が出せない。

(どうしよう……。すごく、嬉しい……!)

 喜びに体が震えそうだった。
 むしろ泣きそうでそれを堪えるのが大変である。
 しかし、何も答えない秋に、円堂は先ほどまでの自信はどこへやら、急に狼狽え始める。

「え? あれ? 秋、もうどこにするか決めちゃった? ごめん、オレ勝手に決めちゃって……でも秋が行きたいとこあるなら、無理にとは言わないし、な?」

 怒らせてしまったのかと、円堂はしゃがんで秋を見上げる。
 机の向こうにちょこんと手を載せ、顔だけでこちらを見つめるその姿がどこか可愛らしくて。
 秋は思わず小さく笑う。
 小首を傾げ、どこか不安げな表情の円堂に、秋は目尻の涙を拭い、にこりと微笑んだ。

「私も、円堂くんと一緒にサッカー部作りたい。また一緒にサッカーやりたい!!」

 秋の答えに、円堂は再びぱあっと破顔する。
 そして立ち上がり、手を差し出した。

「これからもよろしくな、秋!!」

 秋も立ち上がり、手を伸ばす。

「こちらこそ!!」

 2人はしっかりと握手して、にっこりと笑い合った。
 その晴れやかな表情を、鮮やかな夕日が照らしていた。


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