コーセルテル 子竜物語 ６９話

「カータと絵本絵日記」　（ゼロサム２月号）

タイトルの通り、今回はカータがメインのお話です。

マシェルの子竜たちは幼竜の頃には絵日記をつけてマシェルに見せていましたが、今でもそれを続けているのはカータだけ。
アータとタータは文字だけの日記を書いているけどマシェルには見せない、マータとハータもたまに書いているけどやっぱり見せない、ナータとサータに関してはまったく書いていないそうです。
もともと文字の練習のためにやっていたようなものですから、今でもやる必要はないとはいえ、性格が出ますね（笑）
そしてこの日、マシェルに絵日記を見せたカータは、絵がとってもうまくて、字も文も読みやすくて、まるで絵本を読んでいるみたいだとマシェルに褒められました。
そして残りのページが少なくなっていることに気づいたマシェルは、他の子達の分にと用意していたけど、みんなが書かなくなって余ってしまっていたノートと予備の色鉛筆をすべてカータにあげます。
いっぱい書いてねとマシェルに微笑まれ、カータはノートを抱き締めながら満面の笑みで返事をします。
明日からもいっぱい書けるとうきうきしながら部屋に足を運び、マシェルに絵本みたいと言われたことを思い出し――。

翌朝。
アータは寝坊します。
いつもならカータが一番に起きて起こしてくれるのに、それがなかったからです。
カータはどうしたのかというと、すでに起きてはいますが、朝から絵日記を書いていました。
絵日記帳をいっぱいもらったから、今まで書ききれなかったことも書きたくなったそうです。
全部書けたらマシェルに見せてびっくりさせたいから、それまで黙っててとアータに頼むカータ。
マシェルの喜んでくれることですから、アータも快諾します。

朝食の時に、カータが寝坊したことをみんなに珍しがられますが、とりあえず深くは追及されず。
しかしマシェルが今日は書庫回廊へ行くとのことで、ナータとアータとマータはそれに同行し、
ハータとサータとタータは火竜家にメオが帰って来ているから会いに行くことに。
しかしカータはお留守番したいと言い、みんなに一斉に心配されます。具合が悪くて、寝坊したのもそのせいか、と。
絵日記のことをマシェルに秘密にしておきたいカータは説明に困りますが、アータがちょっとお家でやりたいことがあるだけだよとフォローしてくれました。大丈夫だから、カータのしたいようにさせてあげて、と。

アータもすぐに終わるだろうと思ったからそう言ったのですが、それから数日経ってもカータは机にかじりついてばかりです。
みんなが心配し始めて――というか、マシェルが心配するので、ナータもそろそろ黙っていません。
カータが眠っている間にそっとノートを開くと、アータも気づいて起きます。
勝手に人の日記を見ちゃだめだよと言ったアータですが、ナータにノートを見せられて驚きます。
１冊の絵日記の中に、イルベックと精霊術士が来た時のことが、まるで絵本のように描かれていたのです。
まだまだ続きそうな作業に、ナータはマシェルが心配すると言いますが、アータはこれを見たらマシェルはすっごく喜ぶと言います。それにはナータも反論しません（笑）
そしてアータはもうちょっとだけ待ってと言います。何か考えがあるようですが――？

翌日は雨。
机に向かい続けるカータの隣に、アータもノートを持って座ります。
アータは雨の日に、今まで簡単に書いておいた日記の出来事を詳しくノートに書き直しているそうです。
実はこれが楽しみだけど、楽しくて時間を忘れて没頭しちゃうから、雨の日だけにやると決めている。毎日部屋にこもっていたらみんなが心配するから。
アータはこのノートを誰にも見せるつもりはないけど、カータは喜んでもらうために書いてるんでしょ？と聞きます。
でも、喜んでもらうために心配をかけてしまったら本末転倒です。そのことに気づいたのか、カータはちょっと複雑な表情。
さらにアータが、ずっと家にいたら楽しいことを見逃しちゃうでしょと言うと、カータはうんと答えました。
でもこれだけ、あとちょっとでひとつ書き終わるからと最後の仕上げ。
できたらおやつの時間にマシェルに見てもらって、みんなにも見てもらう。それで心配かけてごめんなさいって言う。
そう言ったカータにアータも微笑んで頷きました。
それと、カータも雨の日に書くことにする、と。

そして出来上がった絵日記はマシェルにもみんなにも喜ばれ、それはこれからも増えていくことでしょう。

っていうか、地竜家の地下書庫には意外と日記っぽいものも多かったから、これも書庫回廊の精霊に見せれば本と認めてもらえそうですよね。アータの方も。