コーセルテル 子竜物語 ９６話

「竜の都の竜術士⑲」　（ゼロサム８月号）

ラシェたちを巡る争いとは何なのか。
カロアスはこの先はちょっとやそっと手助けした所で変えることはできないと言います。ダグを本気で助けたいなら“夢”を終わらせてここから連れ出せ、と。
ラシェたちのことをマシェルは心配しますが、カロアスは今のあいつらに救わねばならんところなどないと言います。ないと断言する前にちょっとだけ間がありましたが、彼らはこれからダグが乗り越えなければならない”試練”ーー滅び亡くなった多くの悲しみを乗り越えて、今ある自分を受け入れている、と言ったことから、それは今の平和なコーセルテルがあるお陰ということでしょうか。
フェルリさんも今の自分を受け入れているから、心が通じたならダグを彼女に寄せてやれる。黒精霊の集合体の中にいるよりよっぽど安定するだろう、と。
ダグはフェルリさんのように魂から妖精体になった黒妖精じゃない。
カロアスが滅びた竜都を呪ってやろうとそこら中にいた負の念を持った霊体や思念を集めたら、その中にダグの念がまじっていた。
「あいつ自身は、暴走する竜王を止めようとしてはるか北の地で魂ごと消しとんでいる」
だからダグの思念を見つけた時は驚いた、と。
呪いというより悔いと悲しみばかりの念の中で少しばかり力をつけて黒精霊と化かすことができたが、奥方の元にいて力をつければ元のあいつに戻るかもなと言ったカロアスは、青年の姿から中年くらいの姿に。カロアスが黒精霊と化した本来の歳だそうです。ダグに合わせて当時の見た目にしていたそうです。
今のダグに滅びにつながるものを見せればすべてご破算。元が呪いの黒精霊だから、簡単に呪いに引かれてしまう。
カロアスはコーナに力を借り、ダグをフェルリさんの中に帰しました。
そして奥方もろともあいつの故郷へ連れて行け、と言います。
「あいつの望んだ人と望んだ場所で力を取り戻すのが一番だ」
ダグの故郷、つまりそれはマシェルの故郷。
思いがけずマシェルの故郷へ行くチャンスが来て、ナータはすぐにマシェルを振り見ます。
しかしーー「ーー行けません」
マシェルは思いつめたような表情でそう答えました。
「僕の故郷には…行けません」

まぁ、滅びにつながるものを見せてはいけないと言われたらそうですよね。
マシェルの故郷はマシェルが故郷を出る時点で半壊、カディオさんがエカテリーナさんと出会ったのがその故郷だったのならもう無くなっているということですもんね。